A/Bと音量合わせ

2系統のシグナルチェーンをメモリ上に常時常駐させるため、瞬時の切り替えが可能です。ラウドネスマッチングは再生音声のレベル計測ではなく、各ノードのフィルタ係数から数学的に算出されます。

2つのスロット

  • スロットAは、通常の再生設定画面で適用されているシグナルチェーンと同一です。どちらの画面で変更しても同じスロットに反映されます。
  • スロットBは比較対象のチェーンを保持するスロットです。非選択時にもあらかじめバックグラウンドでロード・初期化されるため、切り替え操作と同時に遅延なく試聴できます。
  • スロットA/Bに加えて「バイパス(素通し)」が常時第3の選択肢として用意されており、これがラウドネスマッチングの0 dBリファレンス基準となります。
  • スロット切り替え時は5〜10 msのクロスフェードを実行し、畳み込み(FIR)の履歴バッファも引き継がれます。これにより、切り替え後のチェーンはフィルタバッファが満たされるのを待つことなく、先頭サンプルから完全に正しいレスポンスで再生されます。
  • ブラインドテスト(盲検)モードは設けていません。現在試聴しているスロットは常に画面に明示されます。目的は当てものゲームをすることではなく、設計変更の前後の音響的変化を確信を持って吟味・往復することだからです。

音量合わせの計算

補正ゲイン [dB] = -(シグナルチェーン内の線形段を合成した通過レベル)

合成対象:     gain / biquad / dc_blocker
0 dBとみなす: すべての非線形段、すべての空間・定位系段
補正リミット: ±12 dB
補正量はチェーンのフィルタ係数から直接算出されます。再生中の楽曲内容やダイナミクスに依存しないため、試聴中に補正ゲインがフラフラと変動することはありません。
  • ドライブゲインは各ノード内部で自動補償されています。

    非線形ノードはDrive値を引き上げても出力実効レベルが一定に保たれるよう設計されているため、A/Bマッチング計算では一律0 dBとして扱われます。Driveを上げたことで音量が極端に増大したとすれば、それはマッチング機能で誤魔化すべきものではなくノード設計の不備です。

  • 空間系ノードのレベル変化は補償対象外です。

    音像定位や空間拡張系のノードによって生じるエネルギー変化は線形計算の対象外です。必要に応じてグラフ内にGainノードを配置し、手動でゲインステージングを行ってください。

  • 基準レベルの正弦波をベースに計算しています。

    正弦波と異なりクレストファクター(波高率)が大きく動的な実際の音楽では、完全な一致ではなく「実用上十分に揃った近似値」となります。

  • 補正上限(±12 dB)に達した場合は警告が表示されます。

    スロットの補正量が±12 dBを超過した場合、補正値は±12 dBでクリップされ、完全には音量が揃っていない旨がUI画面に明示されます。この場合はグラフ内の各ノードのゲイン配分(ゲインステージング)を見直してください。

  • 片方のスロットのみ非線形ノードを含む場合、音色以外の動作も変化します。

    片方のスロットにのみ非線形ノードが含まれている場合、安全のためセッション全体で出力リミッターが作動待機(アーム)状態となり、比較試聴の挙動にリミッターの存在が影響します。画面上にもその旨のインジケータが表示されます。