MacのQobuzをDACへ出す。ハイレゾのまま届いているかを確かめる
著者 Taiki NodaSonir Bench 0.1.62で確認(2026-10-15)
MacのQobuzアプリは、アプリの中で出力先にDACを選べば、曲ごとにデバイスのサンプルレートを切り替え、数値を変えずに送ります。実測ではCD音質で44,100 Hz、ハイレゾで96,000 Hzに切り替わり、16bitも24bitも格子に100.00%乗っていました。崩れる原因は、アプリやMacの音量、通知音などほかの音が同じDACに混ざること、デバイスのレートが曲と合っていないことの3つです。
この記事では、MacでQobuzをDACへ出すときに見る場所と、「本当にハイレゾのまま届いているか」をどう確かめるかを書きます。QobuzはMac・Windows・iOS・Android向けにアプリがあり、日本では2024年10月24日に正式にサービスが始まりました。音質は44.1 kHz/16bitから192 kHz/24bitまでです。
MacでQobuzの音がDACに届くまで
Qobuzアプリが曲を再生すると、デコードされたPCMデータがmacOSのオーディオ機能(Core Audio)を経由して出力デバイスへ渡ります。USB DACを接続していれば、そのデバイスがDACです。この途中でデータが改変されてしまう主な要因は、大きく分けて次の3つです。
| 変わる場所 | 何が起きるか | 避け方 |
|---|---|---|
| アプリの音量 | 音量調整によりデータに係数が乗算され、元の値が失われる | アプリの音量は最大のまま、音量はDACやアンプで下げる |
| レートの違い | デバイスのレートが曲と違うと、macOSがレートを変換する | 曲に合わせてレートを切り替えるアプリで、出力先を直接選ぶ |
| 他の音の混入 | 通知音やブラウザの音が同じデバイスで足し合わされる(ミキシング) | Macのサウンド出力をDAC以外にしておく |
ハイレゾかどうかは「何kHzで鳴っているか」だけでは決まりません。96 kHzで出力されていても、途中で音量調整などの演算が入っていれば、DACが受け取るデータは元のファイルと同じではありません。逆にレートが音源と一致し、データも1bitの狂いもなくそのまま届いていれば、ファイルの完全なデータがDACに届いていることになります。これがビットパーフェクトと呼ばれる状態です。
出力デバイスの選び方
アプリの中で出力先を選ぶ
Qobuzの公式ヘルプは、Macでハイレゾを聴くにはUSB DACなどの外付けの機器を使い、それを既定のサウンド出力にするよう案内しています。ただ、Qobuzアプリはアプリの中でも出力先のデバイスを選べます。おすすめはアプリの中でDACを選ぶほうです。
理由は2つあります。
- アプリが自分でデバイスを開く。 アプリの中で出力先を選んだときは、アプリがそのデバイスのレートを曲に合わせて設定します。後で書く実測は、この形で測ったものです
- Macのサウンド出力を別にしておける。 「システム設定」→「サウンド」→「出力」をDACにすると、通知音もYouTubeもそのDACへ行きます。出力をMacの内蔵スピーカーなどにしておけば、DACへ行くのはQobuzの音だけになります
出力先を自分で選べるかどうかは、アプリによって違います。SpotifyとApple Musicにはアプリの中に出力先の設定がなく、Macのサウンド出力に乗るしかありません。この違いが、後述する「データが未加工(ビットパーフェクト)で届くかどうか」に直結します。
排他モードについて
Windowsでは、QobuzアプリはWASAPI(排他)かASIOを選ぶよう公式ヘルプが案内しています。排他モードは、1つのアプリがデバイスを独り占めして、ほかのアプリの音を混ぜない使い方です。macOSにも、アプリがデバイスを独り占めする仕組み(ホグモード)があります。
一方、Qobuzの公式ヘルプのMac向けのページには、排他モードについての記述がありません。Macで同じ効果を得るには、上に書いたとおり、Macのサウンド出力をDAC以外にして、DACを使うのはQobuzだけにするのが確実です。排他利用(独占)していなくても、そのDACをQobuz以外のアプリが使っていなければ、ほかの音が混ざることはありません。
Macの排他モードを調べている人の多くが知りたいのは、ほかの音が混ざらないことと、レートが勝手に変えられないことの2つだと思います。前者はサウンド出力の分け方で、後者は次に書くレートの切り替えで決まります。
サンプルレートの切り替え
Qobuzはレートを曲に合わせる
2026年8月に、Qobuzアプリの中で出力先に仮想オーディオデバイスを選び、デバイスのレートを見ながら再生しました。
| 再生した音質 | デバイスのレート |
|---|---|
| CD音質(16bit・44.1 kHz) | 44,100 Hz |
| ハイレゾ(24bit・96 kHz) | 96,000 Hz |
曲の音質を変えると、デバイスのレートもそれに合わせて切り替わりました。Qobuzアプリは、出力先に選んだデバイスのレートを自分で設定しています。
レートが合っていないと何が起きるか
デバイスが48,000 Hzで動いているところへ44,100 Hzの曲を送ると、macOSはその途中でレートを変換します。この変換は、送り出すアプリの中で、デバイスに渡す手前で行われます。受け取る側からは、届いた時点でもう48,000 Hzになっていて、元に戻すことはできません。
Appleのサポート記事も、「Audio MIDI設定」で出力のフォーマット(レート)を選び、元の音源のレートに合わせるのが最良だと案内しています。Qobuzのようにアプリがレートを切り替えてくれる場合は、手で合わせる必要はありません。アプリが切り替えない場合は、曲ごとに手で合わせることになります。
現在のサンプルレートを確認する方法
再生中のレートは次のどれかで見られます。
- DACの表示(レートを表示する機種なら)
- 「Audio MIDI設定」でDACを選んだときのフォーマット
- ターミナルで
system_profiler SPAudioDataTypeを実行したときのCurrent SampleRate
ただし、これでわかるのはレートだけです。レートが96,000 Hzでも、途中で音量が掛かっていればデータは変わっています。データが加工されていないかどうかは、次の方法で確認できます。
ハイレゾのまま届いているかを確かめる
量子化グリッド(ビット深度の刻み)で判定する
PCM音源のサンプル値は、ビット深度で決まる一定の刻み(量子化グリッド)の上に必ず位置しています。16bitの音源であれば、すべてのサンプル値が16bitの刻みに100%一致します。しかし、途中で音量を0.9倍にしたり、イコライザーを掛けたり、サンプリングレートを変換したりすると、浮動小数点演算などによって刻みの間に端数が落ち、グリッドから外れてしまいます。
つまり、届いたデータのうち何%がグリッドに一致しているかを調べれば、途中で何らかの加工が入ったかどうかが判別できます。同じ実測で、Qobuzから届いた音を検証した結果が次の表です。
| 送り元 | 格子 | 音量 | 帯域 |
|---|---|---|---|
| Qobuz・CD音質(16bit・44.1 kHz) | 16bitの格子に100.00% | 1.000000倍(+0.00 dB) | 22.1 kHzまで途中の壁なし |
| Qobuz・ハイレゾ(24bit・96 kHz) | 24bitの格子に100.00% | 変化なし | 48 kHzまで途中の壁なし |
| Spotify | 16bitの格子に0.03% |
Qobuzは、CD音質でもハイレゾでも、届いた数値がすべて格子に乗っていました。プレーヤー側で余計な処理が一切施されていないことを示しています。ハイレゾの曲では、16bitの格子に一致した数値は0.38%しかなく、24bitの細かさがそのまま届いていました。測った曲では、40 kHz付近まで-38 dBほどの成分が残っていて、96 kHzの音源の中身が途中で削られていないこともわかります。
対照的にSpotifyでは、16bitのグリッドに一致した値はわずか0.03%でした。プレーヤー側の再生経路で何らかの加工が入っています。
格子から外れても加工とは限らない
MP3やAACのような非可逆圧縮の音源は、デコードした時点で数値が格子に乗りません。途中で何も掛かっていなくても、格子からは外れて見えます。確かめるときは、QobuzのCD音質かハイレゾ(どちらもロスレス)で再生してください。
ビットパーフェクトを確認するための前提条件
- アプリの音量を最大にする。音量をそろえる機能があれば切る
- アプリの中で出力先を選ぶ。Macのサウンド出力はそのデバイス以外にしておく
- CD音質とハイレゾの曲を両方再生し、レートが切り替わるかと、格子に乗っているかを見る
1と2の設定が守られていないと、Qobuz自体には問題がなくても「加工あり」と判定されてしまいます。
Sonir Benchを通すとどうなるか
Sonir Benchは、Macに仮想オーディオデバイス「Sonir Bench」を足し、そこに届いた音に自分で設計したDSPを掛けてDACへ出すアプリです。Qobuzアプリの中で出力先に「Sonir Bench」を選ぶと、次のようになります。
Benchに届くまで
- 仮想オーディオデバイスは44.1 kHzから192 kHzまでのレートを受け付けます。Qobuzの最高音質(192 kHz/24bit)まで入ります
- 仮想オーディオデバイスは音量の調整を持っていません。Macの音量で数値が変わることはありません
- Benchは、仮想オーディオデバイスが現在報告している公称レートに合わせて入力ストリームを開きます。異なるレートで開いてしまうとmacOSがバックグラウンドでレート変換を挟んでしまい、一見正常に見えてもビット透過性が崩れてしまうためです。曲が変わってQobuzがレートを切り替えると、Benchは入口を開き直します。その間、画面には「復旧中」と出ます
モニターで未加工かを見る
Benchの「モニター」画面には「入力の透過性(常時監視)」があり、届いた音を上に書いた量子化グリッドの原理で常時解析しています。
- 格子に乗っていれば、「16bit(未加工)」や「24bit(未加工)」と出ます。ハイレゾの曲なら「24bit の音源データが未加工(ビットパーフェクト)で届いています」です
- 格子から外れていれば、「加工あり」と出ます。あわせて「入力信号がビットパーフェクトではありません」という知らせも出ます
- 「有効ビット数」は、格子の細かさから逆算した解像度です。16ならCD音質、24ならハイレゾです
アプリの音量を下げて再生すると、「加工あり」に変わります。Qobuzの設定が正しいかを確かめるのに、そのまま使えます。
DACに届くのは、設計した音
Benchは、届いた音を内部で16倍のレート(44.1 kHz系は705.6 kHz、48 kHz系は768 kHz)に上げて処理し、DACへ出します。何も掛けない「バイパス」でもこの変換は通るので、DACが受け取るのはファイルそのままのデータではありません。Benchで担保するのは、Qobuzから届いた時点で未加工(ビットパーフェクト)であることです。その後の処理は、自分で選んで設計したものだけが掛かります。
なお、Bench自身は出力先のDACを独り占めしません。Macのサウンド出力が同じDACになっていると、通知音などがBenchの出力とDACの手前で混ざります。直接DACへ出すときと同じく、Macのサウンド出力は別のデバイスにしておいてください。
よくある質問
MacのQobuzに排他モードはありますか
Qobuzの公式ヘルプは、Windowsでは排他モード(WASAPI(排他))を案内していますが、Mac向けのページには排他モードの記述がありません。Macでは、Macのサウンド出力をDAC以外にして、DACを使うのをQobuzだけにすれば、ほかの音は混ざりません。
Audio MIDI設定でレートを手で合わせる必要はありますか
Qobuzアプリの中で出力先を選んでいれば、アプリが曲に合わせてレートを切り替えます。実測でも、CD音質で44,100 Hz、ハイレゾで96,000 Hzに切り替わりました。手で合わせる必要があるのは、レートを切り替えないアプリで再生するときです。
DACが96 kHzと表示していれば、ハイレゾのまま届いていますか
レートが合っていることはわかりますが、数値が変わっていないことまではわかりません。アプリの音量が最大でないときや、ほかの音が混ざっているときは、96 kHzのまま数値が変わります。データが未加工のまま届いているかは、届いたデータが量子化グリッドに一致しているかで確かめます。
SpotifyやApple Musicでも同じように確かめられますか
確かめることはできますが、未加工では届きません。どちらもアプリの中に出力先の設定がなく、アプリ自身か、アプリの音をデバイスへ渡すmacOSの処理で音が変わってから届きます。Spotifyは実測で16bitの格子に0.03%でした。
Sonir Benchでできること
0.1.62で確かめた内容です。
- Qobuzアプリの中で出力先に「Sonir Bench」を選ぶと、Qobuzが切り替えるレートのまま音を受け取ります(192 kHzまで)
- 「モニター」の「入力の透過性(常時監視)」で、届いた音が「24bit(未加工)」か「加工あり」かを常に見られます
- 受け取った音に、自分で設計したEQやエフェクトを705.6 kHz / 768 kHzで掛けて、DACへ出します
設定の手順は音楽アプリの音をSonir Bench経由でDACへ出すにまとめています。